2024年竣工
自邸を建てる、ということを決めたとき、自然と優先されたのは、建築家としてというよりも、施主として、安心して所有していける家にしたいという思いだった。設計していた時期は、ウッドショックや夏の異常な暑さ、電気代、ガソリン代高騰など家計に不安なことが多い中でもあった。そういうことで、自邸は家計と環境に優しいエコな家にしようと決めた。
検討を進めた結果、自家消費分くらいの電力を賄える太陽光パネルを載せたシンプルな切妻屋根の平屋になった。断熱、気密性能を高めることによる夏のオーバーヒートを避けるため、南側の開口は中央の奥まったテラスに軒をしっかり出した箇所のみとしている。
素材は室内外ともに、経年変化も味として楽しめるもの、いざというときメンテナンスや交換が容易なこと、多少の汚れは気にならないこと、エコな思想があるものを意識して選んでいった。まだ幼い息子2人が汚したり傷をつけたりしても、まあいいかと許容できることが大事だと考えた。結果、自然素材の多い家となった。外壁の杉板張りは交換しやすい目板張。工業製品と違い、杉材は廃盤などもなくこの先も安定して手に入れられる安心感がある。杉板張りの経年変化は美しいが、住宅地の中においてその変化の過程は少しワイルドすぎるかなと思い、ウッドロングエコであらかじめグレーに退色させたものを採用した。
内装材もナラの無垢フローリング、再生素材のクロスやカーテンとするなど前出の考えに基づいて選んでいる。暖房は床下エアコン、冷房はロフトエアコンそれぞれ1台で建物全体を空調している。エアコンは家電量販店でも購入可能なものなので、古くなって性能が落ちたり故障したりしても買い替えがしやすい。エアコンのためのロフトだったが、子どもにとって丁度良い遊び場にもなっている。
自宅で仕事をするライフスタイルなので、間取りは、仕事、家事、育児が効率よく楽に回るように考えた。子どもが泥だらけで帰ってきたら風呂場に直行できる動線、干して乾いたらすぐしまえるクローゼットなど。回遊動線が複数あるので、何かのついでに何かすることが自然に出来る。個室は4.5帖と、4.5帖×2に分割できる9帖。ライフステージによってどう使っても良いように考えている。
庭には色々な種類の樹木を植えた。夏場の日射遮蔽が主な目的だが、今後の設計に生かせるように園芸の勉強も兼ねている。紅葉、落葉する木が多いので、四季の変化を楽しみにしている。
建てて完成ではなく、暮らしや季節、家族も変化する中で、素材とともに育っていくような住宅が出来たと思っている。
建築概要
所在地/青森県弘前市
主要用途/個人住宅
設計
白鳥ゆき建築設計事務所 担当/白鳥ゆき
構造 吉川建築設計事務所 担当/吉川泰尊
施工
齋藤工務店 担当/祖父尼宏
構造・工法
主体構造・構法 木造在来工法
基礎 べた基礎
規模
階数 地上1階
敷地面積 363.74㎡
延床面積 96.88㎡(約29.3坪)(ロフト・車庫含まず)
工程
設計期間 2022年10月~2023年9月
工事期間 2023年10月~2024年2月
外部仕上げ
屋根/SGL鋼板t=0.35
外壁/J.ナチュレ杉ボードt=15(ボード&バテン/ウッドロングエコ塗装)
開口部/木製サッシ(NORD)、樹脂サッシ(YKK)、木製玄断熱ドア(ガデリウス)
外構/ウッドベンチ 屋久島地杉、木塀 北海道産杉(ウッドロングエコ塗装)
内部仕上げ
床/ナラ無垢フローリングt=15、磁器質タイルt=9、マーモリウムシートt=2.5
壁/エッグパルプ、磁器質タイル
天井/エッグパルプ、ラワン合板t=9
断熱仕様
基礎/スタイロフォーム3種b t=100+スタイロフォーム3種bAT(防蟻断熱)t=50
基礎底/スタイロフォーム3種bAT(防蟻断熱)t=30
壁/高性能グラスウール(16K) t=100+ネオマフォームt=50
天井/高性能グラスウール(16K) t=200+100
設備システム
暖房方式 床下エアコン
冷房方式 ロフトエアコン
換気方式 第一種換気方式(ローヤル電機)
給湯方式 エコキュート
太陽光発電システム(カナディアンソーラー)
外皮性能・エネルギー
UA値 0.24W/㎡K
撮影:西川公朗